NATSUMI OKUMURA
奥村奈津美
【奥村奈津美のミライ防災+】サステナブル防災のススメ ⑤SDGs×防災
今さら聞けない?SDGsとは??
SDGsとは、持続可能な開発目標(Sustainable Development Goals)のこと。
2015年9月の国連サミットで加盟国の全会一致で採択された、2030年までに持続可能でより良い世界を目指す国際目標です。
全世界の全人類が一致団結して、地球の未来に向かうための画期的な国連文書で、誰でも取り組める国際ルールの集大成とも言われています。
17のゴール(どのような社会を作るか)、169のターゲット(そのために何をすべきか)、約230のインディケーター(指標)から構成され、地球上の「誰一人取り残さない (no one will be left behind)」ことを前文で誓っています。
環境研究総合推進費採択課題「ローカルSDGs推進による地域課題の解決に関する研究」(https://local-sdgs-research.net/)を進めている法政大学の川久保俊教授は、よくある誤認として、以下を挙げています。
×世界各国が批准した国際条約である
×国連が提示した義務的取組事項である
×日本政府が定めた優先的取組事項である
×大企業による大企業のための統治ルールである
どれも誤った認識です。その上で、川久保教授はSDGsを以下のように考えていると話します。
「変化の激しいこの世の中で、サバイバル、生き残っていくために我々が何をすべきかを教えてくれるものと考えています。
今は、VUCA(ブーカ)時代、Volatility(変化の激しい)、Uncertainty(不確実性の高い)、Complexity(複雑性に富む)、Ambiguity(曖昧さを伴う)ー難しい時代です。
そんな中、このSDGsは、個人レベルでも企業学校など組織レベルでも、
・長期的な取り組みの方向性を示す「コンパス」の役割
・関係者との協働を促進するための「共通言語」の役割
・持続的に取り組みを促進するための「エンジン」の役割
ーを果たすものと受け止めています。
そして、何よりSD(Sustainable Development)という考え方に魅了されてこの研究をしているのですが、SDには世代間倫理という考え方が入っていて、自分たちさえ良ければいいという利己主義ではなくて、我々の子供とかその先のジェネレーションにつけを回すような開発は止めよう、という利他主義的な考え方が含まれています」
SDGsと防災の関係性とは?
この「持続可能な開発のための2030アジェンダ」(SDGs)には、 同じ2015年3月、仙台で開催された第3回国連防災世界会議で取りまとめられた2030 年までの国際的指針「仙台防災枠組2015ー2030」 が重要な要素として位置づけられています。
また、日本政府が掲げているSDGs実施指針の中に示された8つの優先課題の中にも「防災」という言葉が入っています。
つまり、持続可能でより良い社会を作るためには、防災が欠かせないということなのです。
川久保教授にもSDGsのゴールとターゲットから考える防災 について伺いました。
SDGsの17のゴールの下にはより具体的な達成目標として169のターゲットが設定されています。
このターゲットの中に、仙台防災枠組2015-2030という記述があります。
具体的には、11.b「2020年までに、包含、資源効率、気候変動の緩和と適応、災害に対するレジリエンスを目指す総合的政策および計画を導入・実施した都市および人間居住地の件数を大幅に増加させ、仙台防災枠組2015-2030に沿って、あらゆるレベルでの総合的な災害リスク管理の策定と実施を行う」と書かれています。
「このレジリエンス(強靭な)という言葉は、そのほかゴール:9、11 ターゲット:1.5、2.4、9.1、9.a、11.b、11.c、13.1、14.2にも登場しますし、レジリエンスという言葉が明示的に入っていなくても防災に関係しているところはたくさんあります」
「例えば、ゴール13には、CO2の排出を全体としてゼロにするカーボンニュートラルに向けた脱炭素化の動き以外にも、温暖化する時代に備えて適応策も合わせて考えてくださいと書かれています。
気候変動に伴ってこれから暑くなってくると、農作物が今までのように取れなくなるかもしれません。
暑くなってくると熱中症の人も増えるかもしれません。
豪雨が増えて、これまで以上に被害者が増えるかもしれません。
こういうことに対しても、きちんと今から手を打ってくださいねと、書いてあるわけです」
また、川久保教授に、災害ごとに関係するゴールの一例も示して頂きました。
暑熱災害対策
「今後、温暖化の影響で夏季における睡眠障害や熱中症などが増えることが予想され、ゴール3の健康への影響を抑制する方策を検討せねばなりません。これは、ヒートアイランド対策などのまちづくりも関係してくるので、ゴール11への対応も重要であることを意味します。
これらは、ゴール13の気候変動適応策として位置づけられます。
分かりやすいものだけを上げても3つのゴールがありますが、例えば、その他にゴール1の『貧困』にも関係があります。
お金がない家庭は暑くてもエアコンを我慢してしまい、そういう方ほど脆弱で暑熱災害の被害にあいやすいのです。
『災害は弱いものいじめ』と言われており、弱い方々が一番被害を受けます。
SDGsは『誰1人取り残さない』がキーワードとなっていますので、弱い立場にある方々を守るためにもレジリエントな社会を作っていかなくてはいけないと思っています」
豪雨災害対策
「豪雨による被害を抑制するためにも、まず、山を守らないといけません。
山の管理が行き届いていなくて、森林の涵養機能が下がっていると、豪雨を契機とした土砂災害・洪水などが起きやすくなるので、ゴール15への対策は重要です。
ゴール9で掲げられている強靭なインフラの整備も必要です。
ゴール6に関連して都市の排水機能を高めることや雨水浸透や蓄雨の促進などで防げる被害もあります。
これらの取り組みが進めばレジリエントで住みやすいまちづくりの実現につながりますので、ゴール11にも関わってきます」
防災教育
「防災教育となると、ゴール4が関連することは当然ですが、ゴール11のまちづくりにも関係しますし、持続可能なライフスタイルに関する教育をしましょうということで、ゴール12も関係します。
さらにパートナーシップを広げながら皆さんで一緒に勉強して理解を深めていきましょうねということでゴール17も関係します」
川久保教授曰く、あくまで分かりやすいところをクローズアップしたということですが、ありとあらゆることが関係し、SDGsの様々なゴールとつながっていくことが分かります。
SDGsへの取り組み方
川久保教授は、このSDGsをいかにローカルに、そして、パーソナルに落とし込むかが伴だと話します。
「私たちは歴史的な転換点に生きています。
SDGsを理解して認知するフェーズは終わり、実践して効果が出ているかを検証するフェーズ(行動の10年)に入っています。自分たちの住んでる地域、自分の仕事の範囲、自分の家であれば、どこに課題があるかを見つけやすいと思います。
身近な課題をそれぞれのところで解決していけば、きっと結果的にその地域が良くなって、国がよくなって、世界が良くなると思うのです。
SDGsは国際社会のTo Do Listのようなものですが、これを眺めているだけでは世の中は良くなりません。
Think globally, act locallyという標語が示すように、国内外の潮流を把握しつつ、身近なところから実践に移すことが何よりも大事です。
ぜひ皆様も持続可能な社会の実現のためにも、身近なところからアクションに移してください」
まずは、自分が行動することが大事!
その行動のきっかけにもつながるサイトを川久保教授が紹介してくれました。
自分の家の防災力をチェックできるサイト→CASBEEレジリエンス住宅チェックリスト(https://www.ibec.or.jp/CASBEE/cas_home/resilience_checklist/webtool/index.html)
国土交通省の支援の下で開発されたもので、家の防災力を無料で診断してくれます。
あなたの家の防災力はいくつですか?
防災力を上げるためのヒントも出てきますので、ぜひ参考にして備えに繋げてください。