NATSUMI OKUMURA

奥村奈津美

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【奥村奈津美のミライ防災+特別編】緊急リポート「熱海土石流から1週間の現場に入って」

By Published On: 2021年7月20日Categories: 防災コラム0.5 min read

熱海土石流から1週間の現場を取材しました。

朝から気温が上がり、30度を超える暑さ。

坂の多い街ということもあり、少し歩いただけでも汗が滝のように流れました。

地元の方も「この1週間で一番暑い」と話していましたが、行方不明の方の捜索活動に当たっている方々や被災住民の方々の熱中症などの健康被害が心配です。

最初に訪れたのは、土石流の起点となった盛り土があったエリア。

国土交通省中部地方整備局の方々が作業されていました。

二次災害を防ぐため、盛り土があったエリアを監視する櫓が設置され、最上部にあるカメラで24時間体制で監視しているとのこと。

許可を頂き、櫓の一番上に登らせて頂きました。

テレビなどの映像で見ていたよりも規模が大きく、山の勾配も急な印象でした。

ここで異変があった場合は、すぐに捜索活動に当たっている人などに連絡がいく体制になっているとのこと。

また、ここからの映像は中部地方整備局のYouTubeチャンネルで見られるようになっています。

※国交省中部地方整備局のYouTubeはこちら⇛https://www.youtube.com/channel/UC7ikdp2FGt_niPat3kAcDKA

そのほかドローンを飛ばして監視したりと、二次災害が起きないよう、様々な方法で監視していました。

被害が大きかったエリアは規制線が貼られ、危険な状況での捜索活動が続いています

続いて訪れたのは、在宅避難をされている方々のいるエリアです。

二次災害と同じく、今後心配になるのが、避難生活で体調が悪化し亡くなってしまう、災害関連死です。

過去の災害のうち、熊本地震では直接死よりも災害関連死が多くなりました。

熊本県の資料を見ると、発災から1ヶ月の間に亡くなっている人が6割。

また、亡くなった場所で最も多かったのが、自宅でした。
※熊本地震デジタルアーカイブ:災害関連死⇛https://www.kumamoto-archive.jp/post/58-99991jl0004fg2

今回、土石流の起きた伊豆山地区では、地元の方に伺うと、規制線が貼られたエリアの外に暮らす住民は、在宅避難している人も多く、また、ご高齢の方が多いということでした。

実際に取材中に出会った在宅避難されている方の多くが高齢者。

停電はなかったが、ガスは2日間くらい、水道は1週間使えない状況だったそうです。

取材したエリアは、訪れた日の朝、仮設のタンクが設置され、水道が応急的に復旧、「お風呂に1週間ぶりに入れた」と話す方も。

坂道や階段が多く、給水所から水を運ぶのが大変だったということです。

階段沿いに家が立ち並ぶ

在宅避難をする一人暮らしの87歳の女性は「電気ガス水道が復旧して安心しました。

一人なので、何かあったら不安ですね、足が悪く、自分で避難もできないので。

顔見知りの近所の方が助けてくださるから、ありがたい。

土石流があった時も、近所の方に声をかけてもらい、なんとか避難できました。

水も、近所の方が運んでくれたんですよ」と話します。

この日は、1週間経って初めて支援物資も届いたそうで、「これまで、ご飯や佃煮など、あるものでしのいでいました。

買い物に行けないので、食料も支援してもらえて本当にありがたいです」と笑顔も見せてくれました。

この方は、足が悪く、移動手段もないため、普段、買い物は、近所の商店や移動販売車などを利用していたそうです。

道路事情などの影響もあり、買い物や病院へ行くことができないという、不便な生活が続いていました。

給水所、支援物資の拠点となっていた場所

在宅避難の方々への支援を続ける伊豆山第一地区組長の荒木道夫さん(73)は「行方不明の方が1日も早く見つかることが一番ですね。

通行止めなど、自分たちの生活が多少犠牲になっても、優先して欲しいです。

ひとまずライフラインが復旧したので、買い物に行けない人たちの食べるものを届けてあげたいと思います」と話します。

 

伊豆山第一地区組長の荒木道夫さん(右)

地元の青年会議所の方々などが、一軒一軒回って、食料など支援物資を配布する活動を始めていたり、災害派遣医療チーム(DMAT)が入って見回りも行っているということでした。
災害関連死となる方が出ないように、在宅避難の方々への支援も充実することを願います。

大破した車。土石流の威力を思い知らされます

今回、亡くなった方々の年齢を見ていても、やはりご高齢の方が多いです。

遠く離れて暮らすおじいちゃん、おばあちゃんのためにできることを改めて、家族で話し合う必要があるのではないでしょうか。


《おじいちゃん・おばあちゃんの命を守るためにできること》

【事前にやっておくこと・その1】
おじいちゃん・おばあちゃんの暮らす地域のハザードマップをチェック!インターネットで住所を入力するだけで簡単に見ることができます。
※国交省のハザードマップポータルサイトはこちら⇛https://disaportal.gsi.go.jp
ご高齢の方は自分では確認できない方もいるので、家のリスクや避難場所など、家族みんなで確認しましょう。

【事前にやっておくこと・その2】
おじいちゃん・おばあちゃんの暮らす地域の防災情報を常に受け取る!自治体の防災情報メールに登録したり、アプリの地域設定で祖父母のエリアも追加したり、防災情報を受け取る方法は様々あります。

国土交通省も「逃げなきゃコール」という取り組みをしています。
※国交省の「逃げなきゃコール」はこちら⇛http://www.mlit.go.jp/river/risp/policy/33nigecall.html
ご高齢になると、スマホなどを駆使して情報を得ることが難しい方もいるので、代わりに情報収集するように努めましょう。

【災害の恐れがある時・その1】
天気予報などで警戒を呼びかける情報が出ていたら電話する!

おじいちゃん・おばあちゃんも不安な気持ちで過ごしているかもしれません。

このタイミングで電話することで、おじいちゃん・おばあちゃんも慌てず心構えができると思います。

【災害の恐れがある時・その2】
危険なエリアに住んでいる場合は「警戒レベル3」で避難の電話!夜間や豪雨で外に出るのが難しい状況だったら、2階以上に垂直避難、近くの頑丈な建物に避難など、その時の状況に応じた避難方法を具体的に伝えることが大切です。

立退避難をしないと危険なエリアに暮らしている場合は特に、早めに安全な場所に移動するよう促してください。

【事前にやっておくこと・プラス】
近所にサポーターを作ろう!一人で避難が難しい方もいると思います。

災害対策基本法が改正され、個別避難計画を作ることが自治体の努力義務となりましたが(前回のコラムを参照⇛【奥村奈津美のミライ防災+】2021年は「福祉防災元年」)、まだまだこれからという状況。

災害後に熱海市の個別避難計画について取材しましたが、まだ検討段階で、今回の災害では機能しなかったとのことでした。

コロナ禍でおじいちゃんやおばあちゃんに会いにいくことも難しい状況が続いていますが、もし、帰省ができたなら、近所の方にも挨拶し、何かあった時は一緒に避難してほしいとお願いするなど、防災のことも考えるきっかけにして欲しいです。

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