NATSUMI OKUMURA
奥村奈津美
福島第一原発20キロ圏内ツアー⑦富岡町Ⅰ
Nさん曰く、警戒区域内は?国道沿いで車を停めてはいけないということで、
大熊町を足早に南下し、続いて富岡町へ入りました。
桜の名所、夜の森公園の看板を見つけました。
以前、取材させて頂いた富岡町の方が、
「東日本大震災のあった2011年も見事な花を咲かせていて、
それをテレビで見て、涙が出た」
と、おっしゃっていたのを思い出しました。
いつかその桜を見てみたいと思っているので、下見に寄れればと思ったのですが、
柵があって入れませんでした。
桜並木の多くが帰還困難区域にあるということでした。
国道6号線沿いには、緑のシートで覆われたエリアがありました。
Nさんにこれは何ですか?と聞こうと思った矢先に、
シートがかかっていないエリアが見えてきました。
緑のシートの下は、すべて、あの黒いフレコンバックだったのです。
その広大な面積にぞっとしました。見渡す限り放射性廃棄物で埋め尽くされていました。
すると、Nさんは、
「もっともっとたくさんありますから…」
そして、国道6号線から海に向かって伸びる路地を入ると、
黒いフレコンバックの山が見えてきました。
↓
よく見ると、「しゃへい」という文字が書かれていました。
ひらがなで「しゃへい」「しゃへい」「しゃへい」
なんだか、おまじないのようでした。
中に何かを入れて、放射線を遮蔽しているという意味なんでしょうか?
※しつこいようですが、このフレコンバックは放射線を遮蔽する機能はありません。
そして、これらは人力で積み上げられています。この作業に携わってくださっている方たちはどのくらい被曝するのでしょうか…
↓
現時点で、除染で出た放射性廃棄物が集められている場所は仮置き場だったり、仮仮置き場だったり…
つまりは、一時的に置いているということです。
11月21日放送の「NHKスペシャル」にもありましたが、
福島県で出た原発事故のゴミは、福島第一原発の周辺、
双葉町と大熊町にまたがる形で作られる「中間貯蔵施設」で保管する予定になっています。
その中間貯蔵施設を作るために必要な土地の広さは、渋谷区と同じくらいの面積…
そして、その土地を確保するためには、地権者から同意を得なくてはいけませんが、
地権者が見つからなかったり、見つかっても同意が得られなかったりと、
現時点では、中堅貯蔵施設の着工の時期すら目処が立っていないそうです。
極端な言い方かもしれませんが、
ある日、突然、「渋谷区は中間貯蔵施設にします。立ち退きです。」
なんて言われたら、どうしますか?
渋谷区に限らず、自分の故郷がそうなったら…
原発事故による放射性物質は、福島だけでなく、東日本に大量に降りました。
福島以外の東日本の自治体でも、ゴミの処分ができず、行き詰まっています。
黒いフレコンバックの山の近くには、
Nさんいわく、「減溶化」、放射性廃棄物を燃やして量を小さくしているそうです。
ただ、その燃え残った灰は、高い放射性物質になり、
この施設自体も、放射性廃棄物になるそうです。
「 仮設」焼却施設ということは、いつか壊すことになる訳ですもんね。
原発事故後、
多くの方が、福島の復興を目指して、「除染」に尽力してくださっています。
それによって集められた放射性廃棄物の処理に困っているのですが、
この4年半、東日本に降り注いだ放射性廃棄物のうち、除染などで回収できたのは、
およそ3%だそうです。
この数字に愕然としてしまいますが、
Nさんは、こう言いました。
「福島はご覧の通り、自然豊かな山々に囲まれています。
その山々を全て除染するなんて不可能ですよね…」
片付けられない原発事故のゴミ、放射性廃棄物の現実を突きつけられました。
福島第一原発の溶け落ちた核燃料をどうするのか?
そして、増え続ける汚染水は?
私たち人間は、とんでもないことをしてしまいました。
環境省のホームページによると、
放射性物質の半減期(放射性物質の数が半分になるまでの時間)は、
セシウム137で、30.2年!
つまりは、原発の廃炉作業が順調に進み、新たな放射性物質が放出されなかったとしても、
半世紀以上は、原発事故のゴミを管理し続けなくてはいけないということです。
自分が生きている間に、ゴミの問題も含めて、この事故が解決されることを切に願います。